太陽に届く場所
 「彰、一緒に学校いこ」
 家の前で、悠弥くんが待っていた。
 「うん」
 僕らは並んで歩き出す。
 「ねぇ、悠弥くん」
 「ん?」
 「いつも待たせちゃってごめんね。僕なんか待ってないで、先行っててもいいからね?」
 「彰と一緒に学校行きたいから待ってるんだよ。だから気にすんなって」
 「そっか」
 「彰は俺と一緒に学校行くの嫌か?」
 「ううん、嫌じゃないよ」
 「じゃ、明日も待ってるから」
 「うん」
 たくさんの同じ制服の中に混じって校舎に向かい、廊下で悠弥くんと別れて教室に入った。
 そういえば、木原さんって僕とも悠弥くんとも同じクラスじゃないんだよなぁ。
 部長とも違うし、あの日出会わなかったら、今みたいに仲良く話したりできなかったかも。
 木原さんが来てくれてから、ウチの部も明るく活気が出てきたように感じるし、彼女には感謝してもしきれないや。


 放課後が待ち遠しくて、誰よりも先に教室を飛び出した。
 「あーきらーん!」
 部長の声が聴こえて振り向くと、全速力でこっちへ走ってくる部長が見えた。
 「どうしたの、部長」
 「ちょっと話したいことあんの。部室、まだ誰も来てないと思うから来てくれないかにゃあ?」
 短い距離とはいえ全力疾走してきたのに、息ひとつ切らせることなく部長が答える。
 「わかった。部室いこっか」
 部長が僕に話したいことって何かわからないけど、わざわざ呼んだんだから大事な用なのだろう。
 僕は部長のあとについていって、部室へ向かった。


 部室の休憩ゾーンにあるソファーに、テーブルを挟んで向かい合うように座って、僕は部長が話し始めるのを待つ。
 「あんね、話したいことってのは、ゆーやのことどう思ってるのかってことなの」
 僕が悠弥くんのことをどう思っているか?
 どうして部長がそんなこと聞くんだろう?


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