リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
穏やかに尋ねると、その耳までも赤くなりながらも、言葉の真剣さに気付いたのか、望美が少しだけ考え込む。

私は、何も言わずに、前に落ちる望美の髪を取り、静かに赤い耳にかけた。

望美はされるままになりながらも、ゆっくりと口を開く。

「――…私たちは、愛し合っているんですよね?だから、許すとか、そういうのっていらないと思うけど……。」

少しだけ恥ずかしそうに、望美は呟いた。

望美の口から零れるその言葉が、妙に暖かく私の心に響いた。

『愛し合う』

互いに、想いを寄せていると……望美も、私と同じように想っているということなのだろうか?

望美も私を、求めてくれていると言うことなのだろうか?

この心と、体と、その先のものまで、すべてを欲しているのだろうか。

だが、そうなのだとすれば、これほど、幸福なことはないだろう。

――…愛するものに、愛される。

それは当たり前のようなことなのだが、まるで、奇跡のようなことだ。

そして、私は今、その奇跡を手に入れている。

そう想うと、何故か心が凪ぎ、優しい気持ちが心に広がった。

「お互い様、ってことじゃないですか?」

「……そうか。私たちは想い合っているのか……。」

そう、素直に思う望美だから、抱いていても、私が優しくされていると感じるのだろう。

私が、これほどまでの幸福感を覚えることが出来るのだろう。

ならば、望美はどうなのだろう?

己の想いばかりが先立つ私は、望美を大切に出来ているのだろうか。

望美が想うほどに、私も望美を包み込むように想うことができているのだろうか。

少しばかり、私も考え込むように口を噤むと、望美がむ~っと口を尖らせた。

「……今まで、そんなコト考えたことがないって、顔してますよ?」

「ああ……。考えたこともない。」

正直に言えば、望美がどこか呆れたようは表情を浮かべる。

そして、ぱたりと、私の胸の上に倒れこんでくるので、すぐに、その背を包んだ。

「……考えたこともなくても、あんなにも優しく人を愛せるって、考えてみると、すごいことですよね……。」

望美が独り言のようにポツリと呟いて、私の胸に手を置いて、パッと顔をあげた。

「先生の、そういうトコって、本当にすごいと思います。」

ニコッと笑う望美に、私は苦笑を浮かべるしか出来ない。

「私は、穢れることないお前の心を称賛する。それは尊ぶべきものだ。」

想いのままに言葉を紡ぐと、少しだけ望美が嫌な顔をした。

「……本当に穢れてないと、思いますか?」

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