リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「じゃあ、私にとっての将臣くんって感じですね?」

「そうなるのだろう。」

二人で穏やかに話をしていると、ようやくビスクールが現実を知ったらしい。

ハッとして、リズヴァーンに視線を向けた。

「おっ、おい、ちょっと待て!妻だと――っ!?」

「そうだ。」

どこかうれしそうなリズヴァーンに向かい、ビスクールが慌てたように、大きな声を出した。

「リズヴァーン!この女は『人』だぞ!?」

「そうだ。」

「そうだって――…。何で、こんな女と…。」

驚きを通り越し、呆然とする男にリズヴァーンは苦笑し、望美は頬を膨らませる。

「先生、この人、何気に失礼です!」

空いている手で外套の端を握り、少しだけ引きながら、望美は口を尖らせ、リズヴァーンを見上げた。

その愛らしい様に、リズヴァーンの目元が、緩む。

「すまぬ。悪気があるわけではないのだ。」

「それでも、ムカつきます!」

「そうか。すまない。」

「だから、何でこの人じゃなくて、先生が謝るんですか?」

望美が外套を離し、ビスクールに向かい指を指すと、指された当人がむっとした顔をする。

「何で、俺が『人』ごときに謝らなきゃならないんだ。」

「いきなり剣を抜いたんだから、謝るのは当然でしょう!?」

「素直に答えなかったのは、誰だ?殺されなかっただけマシだと思え。」

「ものの尋ね方も知らない人に、言われたくない!」

「貴様…。言わせておけば…っ!」

「何よ!」

二人のやり取りを聞きながら、大体のことを知ったリズヴァーンが、苦笑を深めた。


「今、望美が茶を入れている。今日はゆっくりしていくがいい。」

リズヴァーンは作務衣に着替え、縁側に座るビスクールの横に腰を下ろした。

「何なんだ、あの女は!」

ビスクールはリズヴァーンを見ることなく、怒りをあらわに、口を開く。

だが、リズヴァーンは穏やかに目元を緩ませた。

「私の妻だと、言ったはずだ。」

「それは聞いた。だが、何故、あんな女を選んだ?お前なら鬼の中で、もっといい女を娶れるだろう?」

「望美は、私の唯一無二。それ以上も以下もない。」

当然とばかりに言うリズヴァーンに顔を向け、ビスクールが呆れた表情を浮かべる。

「…お前、どこかおかしくなったのか?」

昔馴染みの、どこか心配そうな物言いに、リズヴァーンが不思議そうな顔をする。

「何故だ?」

「前に言っていただろう?自分には惚れている女がいると。優しくて、美しい女だと。そう言っていたよな?」

「そうだ。」

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