リズ×神子２-お前がそう望むのであれば-

「じゃあ、何故、その女と一緒にならない？いくらなんでも、『人』を娶るような馬鹿なことを、しなくてもいいだろう？」

詰め寄るように聞いてくるビスクールの言葉に、リズヴァーンが小さく笑った。

「ビスクール。私の想い人が、望美だとは思わぬか？」

楽しげな表情を浮かべ、リズヴァーンがゆっくりとビスクールへと視線を向けた。

その視線を捉えたビスクールが、呆れた声をあげる。

「はぁ……？そんなこと、思うわけがないだろう。」

「何故だ？」

「あの女の、何処が優しくて、美しいんだ。愚かで考えの至らない、ただの『人』じゃないか。」

『人』を蔑むビスクールに、リズヴァーンが怒ることもなく、穏やかに口を開いた。

「…お前にはそう見えるか？」

「見えないやつの、頭がおかしいんだ。」

「ならば、私はお前の言うとおり、おかしいのだろう。」

クスリと笑い声を零すリズヴァーンに、ビスクールが少しだけ肩を落とした。

「なぁ、リズヴァーン。悪いことは言わない。早く、あの女を追い出せ。」

「断る。」

「お前は、このまま『人』と暮らすつもりか？」

「無論。」

否を言わせない強い意志に、ビスクールは真剣な声を出し、リズヴァーンに詰め寄る。

「何故だ？何故、そこまで『人』に情けをかける？あんな女、放って置けばいいだろう？」

「情けではない。私が望美を手放せないのだ。」

ビスクールの問いかけに、リズヴァーンが幸せそうに、笑みを浮かべ呟いた。

リズヴァーンの惚気のようにも取れる言葉に、ビスクールが心底、ため息をつく。

「いい加減、目を覚ませ。あんな『人』を娶るとは同族の恥だぞ。」

ビスクールがそう言い切った瞬間、その頭に茶が注がれた。

ぽとぽとと、ビスクールの金色の髪先から、大きな雫が落ちる。

「――…他に、言いたいことはある…？」

望美は怒りをあらわに、湯飲みにあったお茶を最後の一滴まで、金色の頭にぶちまけた。

茫然自失のビスクールは、固まったように動かない。

「失礼な男だと思ったけど、ここまでだとは思わなかったよ。」

吐き捨てるように、冷たく言い放つ望美に、リズヴァーンがため息を零す。

「…望美。拭くものを持ってきて、ビスクールに謝りなさい。」