リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
その言葉に、望美はリズヴァーンを見上げ、怒りをもって睨みつけた。

「イヤです。始めにケンカを売ったのは、この人です。」

「ビスクールは私を気遣っただけのこと。お前が怒ることではない。」

「先生は、侮辱されて、怒るなって言うんですか!?」

「そうだ。悪気のない言葉に、怒る必要はない。」

「それでも、度が過ぎています。」

きっぱりと望美が言い切れば、自分を取り戻したビスクールが、すっと、鯉口を切った。

「――…貴様――っ!」

怒りのままに刀を振り上げるビスクールを、望美はキッと睨みつける。

だがすぐに、その腕をリズヴァーンに掴まれ、引かれた。

そのままバランスを崩し、望美はすっぽりとリズヴァーンの腕に抱え込まれる。

「せっ!先生、離して!」
「どけっ!リズヴァーン!」

その行いに、望美とビスクールは同時に声を上げた。

自分の胸に押し付けるように望美の頭を抱え、その体を抱き締めながら、リズヴァーンは穏やかに、語りかける。

「二人とも、落ち着きなさい――…。」

「落ち着けません!」
「俺は、落ち着いている!」

同時に上がる、正反対の言葉に、リズヴァーンが小さくため息をついた。

望美を抱えながら、リズヴァーンがゆっくりとビスクールを見上げる。

「ビスクール、妻が失礼な行いをした。すまない。」

真っ直ぐに見つめ、謝るリズヴァーンを、ビスクールは何も言わずに、ただ、見つめ返した。

「………。」

「ビスクール、刀を納めてほしい。」

再度、その名を呼び、語りかけると、フンッと鼻を鳴らし、ビスクールがゆっくりと太刀を下ろす。

「…リズヴァーン。それほどまでに、その女に溺れたか。」

「そうだ。」

その瞳を見ながら目元を緩ませ、リズヴァーンがはっきりと言えば、ビスクールが太刀を鞘に収める。

だが、怒りのままに、その青い瞳を望美へと落とした。

「…貴様さえいなければ、リズヴァーンも愚行を重ねずに済んだものを…。」

髪を軽く振り、水滴を払いながら、ポツリと、呪いの言葉を吐くように、望美に向かい苦々しく呟いた。

「…先生。本当にこの人は、先生の友達なの…?」

リズヴァーンの胸に顔を埋めたまま、望美が必死に怒りを抑え、声を出す。

その声に、リズヴァーンが腕を緩めると、ぱっと、苦しげな顔を上げた。

「ここまで言われて、何で先生は怒らないの!?」

リズヴァーンに詰め寄れば、その顔が困ったように歪む。

「…望美…。」

「私はイヤです!こんな人に先生を愚弄されたくありません!」

望美はすっとビスクールへと振り返り、その顔を見上げた。

リズヴァーンに抱えられながらも、望美は射るような視線をビスクールに向ける。

そのあまりにきつい視線に、ビスクールが眉を寄せた。

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