リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「――…望美っ!」
リズヴァーンが慌ててしゃがみこんでくる。
でも、構うことなんて出来ないほど、望美の吐き気は止まらない。
しかも、胃は空っぽだから、出てくるものは胃液だけ。
それが苦しくて、苦しくて。
焼けるような喉の痛さと、つらさで、何度も吐きながら、望美の眦に涙が浮かんだ。
「……はぁっ!はぁ!」
嘔吐も治まり、荒い呼吸をしていると、その背を優しく撫でる手に気付く。
望美は縁側から地へと、体を乗り出したまま、顔を上げることなく、小さな声でリズヴァーンを呼んだ。
「せ、先生。すみませんが、お水を――…」
「わかった。待っていなさい」
小さな返事をした後、リズヴァーンは隠行でその姿を消す。
そして、すぐさまその手に、竹筒と、手ぬぐいを持って現れた。
「あ、りがとう、ございます」
望美は差し出された竹筒を手に取り、何度か、口をすすぐ。
喉は相変わらずひりひりしたが、冷たい水が、口の中をすっきりさせてくれた。
「――…って、ごめんなさい。お庭、汚しちゃいました」
望美は体を起こして、受け取った手ぬぐいで口を拭きながら、バツ悪そうな顔をする。
「それはいい。……大事ないか?」
「はい。吐いたら、楽になりましたから。あの、心配かけてごめんなさい」
「いや、私のことは気にせずともよい。それより、己の身を案じなさい」
「ん~。私は平気です。すっきりしたし」
「だが……」
望美の体を支えながらも、その背からリズヴァーンが心配そうに、少しだけ青さの残る顔を窺う。
だから、どこか困ったように、望美は笑った。
「そんな顔しなくても、大丈夫ですって。別にお腹が痛いわけでもないし」
「だが、お前の体調に気付かなかったのは、私の落ち度だ。……いきなり、起こしてすまなかった」
心配顔のまま、リズヴァーンが眉を八の字に下げ、小さな声で、謝ってくる。
でも、その姿が、甘噛みして怒られた子犬のようで。
つい、望美はクスクスと笑い声をあげてしまった。
「別に、先生のせいじゃないんですから、謝らないでください」
「いや、無理に起こそうとしたのは、私だ」
「でも、先生は悪くないでしょう?起きただけで吐くなら、寝起きは大変なことになってますよ?」
真剣な声で言われて、望美は余計に笑い声をたて、茶化したように言う。
「……それでも、声をかけねば、お前が苦しむコトもなかっただろう?」
「え~。先生に話しかけてもらいないほうが、吐くよりイヤですよ」
すこしだけ不服そうに言えば、その意味に気付いたのか、リズヴァーンがふっと、表情を和らげた。
「声をかけられるほうが、良いというわけか?」
リズヴァーンが慌ててしゃがみこんでくる。
でも、構うことなんて出来ないほど、望美の吐き気は止まらない。
しかも、胃は空っぽだから、出てくるものは胃液だけ。
それが苦しくて、苦しくて。
焼けるような喉の痛さと、つらさで、何度も吐きながら、望美の眦に涙が浮かんだ。
「……はぁっ!はぁ!」
嘔吐も治まり、荒い呼吸をしていると、その背を優しく撫でる手に気付く。
望美は縁側から地へと、体を乗り出したまま、顔を上げることなく、小さな声でリズヴァーンを呼んだ。
「せ、先生。すみませんが、お水を――…」
「わかった。待っていなさい」
小さな返事をした後、リズヴァーンは隠行でその姿を消す。
そして、すぐさまその手に、竹筒と、手ぬぐいを持って現れた。
「あ、りがとう、ございます」
望美は差し出された竹筒を手に取り、何度か、口をすすぐ。
喉は相変わらずひりひりしたが、冷たい水が、口の中をすっきりさせてくれた。
「――…って、ごめんなさい。お庭、汚しちゃいました」
望美は体を起こして、受け取った手ぬぐいで口を拭きながら、バツ悪そうな顔をする。
「それはいい。……大事ないか?」
「はい。吐いたら、楽になりましたから。あの、心配かけてごめんなさい」
「いや、私のことは気にせずともよい。それより、己の身を案じなさい」
「ん~。私は平気です。すっきりしたし」
「だが……」
望美の体を支えながらも、その背からリズヴァーンが心配そうに、少しだけ青さの残る顔を窺う。
だから、どこか困ったように、望美は笑った。
「そんな顔しなくても、大丈夫ですって。別にお腹が痛いわけでもないし」
「だが、お前の体調に気付かなかったのは、私の落ち度だ。……いきなり、起こしてすまなかった」
心配顔のまま、リズヴァーンが眉を八の字に下げ、小さな声で、謝ってくる。
でも、その姿が、甘噛みして怒られた子犬のようで。
つい、望美はクスクスと笑い声をあげてしまった。
「別に、先生のせいじゃないんですから、謝らないでください」
「いや、無理に起こそうとしたのは、私だ」
「でも、先生は悪くないでしょう?起きただけで吐くなら、寝起きは大変なことになってますよ?」
真剣な声で言われて、望美は余計に笑い声をたて、茶化したように言う。
「……それでも、声をかけねば、お前が苦しむコトもなかっただろう?」
「え~。先生に話しかけてもらいないほうが、吐くよりイヤですよ」
すこしだけ不服そうに言えば、その意味に気付いたのか、リズヴァーンがふっと、表情を和らげた。
「声をかけられるほうが、良いというわけか?」