リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
(薬湯を飲まされたら、先生を恨んでやるっ!)

キッと、隣を睨みつつ、悔しさ満載の顔をしていても、リズヴァーンは平然とした顔で何も言わない。

薬湯一つで望美の体調が戻るのならば、嫌がろうと何をしようと、アレを無理にでも飲ませるつもりだろう。

泥のような色をした、沼のような味のする、アレを。

(まったくっ!二人でよってたかって、人を病人扱いして~~~っ!)

それが、わかるから、余計に、腹立たしいことこの上ない。

「嘔吐以外に、何か気になるところは?」

弁慶は、にこやかに問診を続けるが、望美の心はどんどんと、ささくれ立ってくる。

「――…ご飯を食べると、胸焼けします」

「食べすぎと言うことは、ないのですか?」

どうして、聞いてくる声がいちいち、嬉々としているように聞えるのだろう?

いくら、昔から知っているとは言え、仮にも、「元白龍の神子様」相手なのに。

ってか、とりあえずは患者かもしれない人間に、楽しそうに問診するのもどうなのよ!

……とりあえずは、「薬師」なハズのクセに。

そんなに、あの、素敵な薬湯を飲ませたいのか!?

そんなコトを考え、心で悪態をつきながらも、望美は心の底から、イヤそうに口を開く。

「……半分食べると、もう食べたくなくなるんです」

「――…望美さんが、ですか?」

失礼なほど、驚愕したように目を見開いて、弁慶に聞き返される。

行儀は悪いが、この世界のどこかにいる幼馴染のように、望美は舌打ちをしそうになった。

確かに、ご飯を半分以上残すなど、今までの望美ならありえない。

出されたものは、全部食べる。

いつでも、どんなときでも、食べられるときには、何でも食べる。

それは、今はもう会えない両親からの教えだし、長く師事する師匠の教えでもある。

だから、食欲がない自分が病気と思われても仕方がないのか、とも思う。

でも。

別に、痛くもかゆくもないのに、食欲がないだけで、えらいマズイ薬湯なんて飲まされた日には、目も当てられない。

かと言って、ここまできては、弁慶もリズヴァーンも薬湯を飲ませる気、満々なのは肌で感じている。

(――…もう!どうして、この二人を敵に回さなきゃいけないのよっ!)

そう思いながらも、自分ひとりで、この二人に勝てるとは、到底、思えない。

相手は、ニコニコとしながら、とんでもないことを考え出す、自称「元軍師」&「無言で実行」を掲げる「鬼」

しかも、一方は、よりにも寄って、望美の愛しい夫なのだ。

(タチの悪い大人二人に、小娘一人で何が出来るって言うのよっ!)

長年、付き合ってきたせいで、知りたくもないその性格は、知り尽くしている。

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