リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
だから、もう、煮るなり焼くなりすきにして!っていう気分になっても、不思議はないと思う。

「そうですよ。私が、です。ちなみに、10日ぐらい前から、まともに食べてないですよ」

それがどうした!と、口を尖らせながら、ふてくされて、望美はやけくそのように言い放った。

望美の言葉に、弁慶より先にリズヴァーンが反応を示す。

「――…待ちなさい、望美。それは、どういうことだ?」

すっと、目を細め、ものすごく低い声で、咎めるように聞いてきた。

いつもなら、その声を聞いた瞬間に、望美は素直な反応を示すのだけど。

そりゃあもう、昨日のように、すぐさま言うことを聞くのだけど。

さすがに、無理やり来たくもないところに、勝手に連れてこられて。

この後、あの薬湯が待っていると思えば。

素直な反応が出来るはずもない。

……いくら、素直が売りの「白龍の神子」だったとしても。

「だから、ご飯食べた後、どうしても気持ち悪くて、全部、吐いちゃってるんです!」

今の望美はどうとでもなれと、心が荒みそうになっていたので。

思い切り、投げやりに。

さじを投げつけるように。

――…それでもやっぱり、正直に答えた。

「――…っ!何故、その都度、私に言わない!」

ムスッとした顔で望美が言えば、リズヴァーンが珍しく声を荒げる。

「だって、言ったら先生、ものすごく心配するし、ココに連れてくるじゃないですか!」

「当然だ!」

「だから、言わなかったんです!」

言い切って、ぷいっと顔を背ければ、リズヴァーンがカタリと、微かに腰を上げた。

「お前は――…ッ!」

そこに、愛刀シャムシールがあったら、握っていたかもしれない。

九郎ほど、気が短いわけでもないのに。

まがりなりにも最愛の妻に向かって、リズヴァーンは殺気を容赦なく、醸しだす。

ま。実際に、叩き斬ることはないと、お互い知ってはいるのだケド。

可愛さ余って――…ってヤツだ。

それでも。

「こんなもん、寝てれば治るって言ってるのに、先生、信じてくれないじゃないですか!」

怒りを煽るような望美の言葉を吐けば、リズヴァーンが絶対零度の視線を向けた。

だが、言い合う二人を楽しそうに見ていた弁慶が、にこやかに笑い、仲裁に入る。

「二人とも、夫婦喧嘩は家でやってください。今は望美さんの体調の方が大事です」
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