リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「僕は、多分、そうなのだと思いますよ?」

「………………」

「それなら、望美さんの具合の悪さも説明もつきます」

「……間違い、ないのか?」

珍しく、戸惑うように、リズヴァーンが小さく呟く。

零れ落ちた言葉に、これも、珍しいことに、弁慶が心からうれしそうに笑った。

「ええ。僕も何度か、そのような方を診ていますから。誤診はないかと」

「……………そうか」

一言、そう言って、リズヴァーンは今度こそ、本当に、黙ってしまう。

横で交わされる意味不明な話に、望美は珍しいものを見るような顔で、俯くリズヴァーンを見ていた。

(な、何で、先生が弁慶さんにヘコまされてるの……?)

でも、まぁ、不可解な状態のリズヴァーンはさておき。

「あの……。意味が、まったくわからないんですケド?」

とりあえず、望美は小首を傾げて、弁慶に尋ねる。

「そうですね。なんと説明しましょうか」

「ん~、私は病気なんかじゃないと思うんですけど。……どうでしょう?」

最後の審判を受けるように、真剣に聞いてみれば。

「ええ、そうですね。望美さんは病気ではありません」

弁慶はきっぱりと、言い切った。

途端に、望美はパッと、うれしそうな笑みを零す。

「じゃ、じゃあ、薬湯は飲まなくていいんですか?」

「もちろんですよ。アレは体の悪い人のためのモノですから」

そう断言された瞬間。

望美の顔に、すがすがしいほどの晴れやかな笑みが広がった。

「ですよねっ!ほら!だから言ったんですよ、大丈夫ですって!」

薬湯を飲まないでいいことがわかって、望美は嬉々として、リズヴァーンに向かい笑む。

「もう~、先生は心配性なんですよ~!こんなの今だけですってば。ね?弁慶さん♪」

「ええ。そのとおりです」

賛同するように、笑って言った弁慶に、自分の判断が正しかったと、望美は余計にうれしそうに笑う。

「こんなことで大騒ぎしちゃって、本当に、すみませんでした」

ニコニコと上機嫌で笑いながら、望美は弁慶に向かい小さく頭を下げた。

「いいえ。こんな場面に出合えたのですから、謝ることなどないですよ」

「そうですよね。こんな先生、滅多に見られませんよねぇ~♪」

聡いリズヴァーンの読みが外れるコトも。

外れたことに、自分で衝撃を受けているその姿も。

滅多に見られるものではない。

だから、余計に、望美に一矢報いたカンが否めない。

「でも、誰にでも、勘違いはありますから~♪」

望美は、ここまで連れてきた罰だと云わんばかりに、それはもう、楽しそうに笑う。

そんな望美に、弁慶がゆっくりと笑みを深めた。

それは、見事なまでの、笑みを――…。

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