リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「これでは、「やや」が生まれたら、どうなってしまうのか。今から楽しみですね」

「ホントですよねぇ。「やや」が生まれ、た……ら?……ん?」

そこまで言って、何かがおかしいことに気付いた望美は、言葉を切る。

そして――…。

「……「やや」って、何?」

望美がきょとんとして、聞き返せば、弁慶がうれしそうに笑った。

「いやだなぁ。赤子に決まっているじゃないですか」

「あか、ご?」

聞きなれない言葉の羅列に、望美は不思議そうな顔をして鸚鵡返しする。

でも、弁慶はニッコリと笑いながら。

「ええ。望美さんのお腹にいる子供のことですよ」

いつもと変わらないその口調で、さらりと。

当然とばかりに、穏やかな声で。

いうに事欠いて、弁慶は、そんな爆弾発言を、のたまった。

「……………は?」

望美が呆然としながら、尋ねかえせば、楽しそうに弁慶が笑みを深めた。

「多分、具合の悪かったのも、悪阻でしょう。望美さんの言うとおり、すぐに収まるはずですよ」

「え…っと?……今、………何て?」

「ですから、気分の悪いのも、すぐに終わると……」

「いや、そうじゃなくてっ!」

「ああ。望美さんが懐妊されたことですか?」

「か、懐妊――…って、私、妊娠してるんですかっ!?」

聞きなれない言葉をわかりやすく頭の中で変換しながらも、言われた言葉に、望美は目を丸くする。

「はい。間違いないと思いますよ」

「は、はいって……。それって、なんかの冗談じゃ……」

信じられない事態に、とりあえず、望美は弁慶を疑ってみた。

容赦なく、疑ってみた。

本気で、疑ってみた。

でも、疑われた本人は気分を害した風でもなく、クスクスと笑い出す。

「僕が嘘をつくわけがないでしょう?ああ。だから、宝玉が無くなったのかな?」

「え?宝玉?」

ソレと、コレとが、まったくもって、繋がらない望美は、ワケがわからず聞き返す。

すると、にっこりと。

本当に、にっこりと笑みを深めて。

「ええ。あの日に出来た子なら、頃合もぴったり合いますから」

と、弁慶がこれまた、とんでもないことを言い出した。

「あ、あ、あの日って、まさか……」

引きつる顔をそのままに、愚かにも、望美は弁慶の言うことを繰り返してしまう。

「ほら、覚えていませんか? 」

良くぞ言ってくれたとばかりに、弁慶の顔に、楽しそうな笑みが浮かぶ。

九郎をからかうためにだけ、見せるようなあの笑みで。

多分、何も知らない人が見たら、それはもう、人の良さそうな笑みで。

「少し前に、宝玉が一斉に無くなった日があったでしょう?あの日ですよ」

「……ま、まさか……。あ、の日、ですか……?」

「ええ。その「あの日」です」

きっぱり、はっきり、無理やりに。

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