リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
望美は弁慶によって、否が応にも「あの日」を思い出させられた――…。

『あの日』

それは、望美にとっても、八葉たちにとっても。

忘れようとしても、決して忘れられない日だった。

その日の朝、望美はいつものように、リズヴァーンの腕の中で目を覚ました。

が。

ぼんやりとする望美の目の前に、あるべきモノがなかったのを目にして、望美は驚きで飛び起きた。

『せ、せ、せせ、先生……!何があったんですかっ!?』

パッと振り返り、突然、詰め寄る望美を見て、リズヴァーンも静かに体を起こす。

『落ち着きなさい。いきなり、どうしたというのだ?』

『ど、どうしたも、こうしたも……っ!』

腰を抜かすほど驚いている望美をよそに、本人はまったく気付いていなくて。

慌てふためく望美の姿を、ただ、不思議そうに見ていた。

『あ、あ、あのっ!………メンテナンスに、出してる、とか?』

びっくりとしたまま、浮かんだ言葉をそのまま言えば。

『……望美、私にわかるように説明しなさい。何があったのだ?』

ますます、リズヴァーンが不思議そうな顔をする。

『だ、だから、先生の、その……。地の玄武の宝玉が、私に見えないんです、ケド……?』

『宝玉が?』

小首を傾げるリズヴァーンは、何のことかと、その手で目元に触れて。

ようやく、自分でもわかったらしくて――…。

綺麗な青い瞳が、落ちるんじゃないかと思うほど、見開いた。

『――…宝玉を、……失ったのか?』


それからが、大変だった。

どっかに落としたのかも!と、望美が家中を探そうとすれば、即行、止められて。

ドコからか香ってくる、仄かな花の香りに誘われて、庭に出てみれば。

何故か、春が来たのかと思わせるほど、庭一面に花が咲いていて。

それはもう、百花繚乱とはこのコトだとばかりに、庭中に花が咲き乱れていて。

昨日まで、花一本、咲いていなかったハズの庭を見ながら、望美はわけもわからず、目を白黒させた。

『ど、どど、どういう、ことでしょう?ってか、これは何ですか!?』

だが、問われても、リズヴァーンにだって知る由もなく。

胸倉を掴みかからんとする望美を、好きにさせたまま。

僅かに戸惑いの表情を浮かべ、目を細めて、庭に広がる色とりどりの花々を見つめていた。

『……白龍の仕業だろうが――…』

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