リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
『な、何で白龍なんですか……?』

『このようなこと、神の御技でしかあり得ぬ』

『それは……、そう、かも知れないけど。でも、何で!?』

と、二人でわけもわからない状況を、考え込んでいると。

「説明しろ!」だの、「祝いの宴をしよう!」だの、「見事な花だ……」だの、口々に言いながら。

今度は八葉が一斉に、鞍馬の庵に押しかけてきた。

何処をどう転がって、そうなったのか、今だ、まったくもって、わからないのだけど。

百花繚乱の中。

気付けば、みんなで呑んで暴れて、舞わされて。

朝から一日中……いや、次の日の明け方まで、一晩中。

大宴会で、えらい騒ぎになったのだから――…。

絶対に、忘れるはずがない。

そして、その日から、望美は神子としての力と、逆鱗を失った。

白龍との縁が切れたわけじゃないのは、なんとなくわかるのだけど。

その声が、聞えない。

ずっと、神子としてこの世界で生きていた望美にとっては、それはあまりに、いきなりな出来事。

同時に、もう、二度と元の世界には帰れないのだと、言い渡されたことになる。

こうして。

『あの日』とは、魂に刻まれるぐらいに、望美にとって衝撃的な日となったのだった。

「……あれは、きっと、白龍からの祝福だったのでしょうね」

『あの日』を思い出しているのか、弁慶がどこか遠い場所を見つめながら、穏やかに呟いた。

の、だが。

望美は、それどころではない。

「で、でも、宝玉がなくなったのと、コレとがどう繋がるんですか?」

パニック寸前になりながら、望美が尋ねているのに、弁慶は考え込むコトもせずに、すらすらと話し出す。

「もう望美さんが守られている存在じゃなくて、守る側に立ったってことでしょう」

「守る、側?」

「ええ。望美さんは僕たちに守られる側から、子供を守る側の人になったんです」

心で泣きながら望美が尋ねれば、弁慶は言い淀むことなく、ペロッとしゃべる。
重大なことを、天気でも話すような気軽さで。

それはもう、胡散臭いほど楽しげに、軽やかに。

まるで、それが正しいかの如く――…。

「ってことは……。そ、それって……」

顔を引きつらせ、もうこれ以上何もしゃべるなと、言いたいのに。

「おめでとうございます、望美さん。あなたは、母になられるのですよ」

トドメとばかりに、弁慶はニッコリと笑みを深めた。

「――…ッ!!!」

その言葉を言われて、ようやく、状況がわかった望美は、顔を真っ赤に染め上げた。

それは、当然だろう。

仲間に医者がいて、その人の口から妊娠を告げられる。

まだ、それはいい。

相手は医者なのだから、仕方がないと思える。

でも。

――…子供が出来た日まで知られているとなると、話は別だ。

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