リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
滅多に「人」の中を歩かないリズヴァーンと一緒だと思うと、少しだけ心が弾む。
道の先から聞える子供の声も、微かに匂う人の家のおかずの香りも、鞍馬にいては感じることは出来ない。
それを寂しいとは、思わないけど。
(たまには、こういうのも、いいよね)
望美は暢気に、そんなコトを考えながら、歩いていた。
が、黙々と歩いていたリズヴァーンが、不意に、望美へと視線を向ける。
「――…とにかく、子を授かったのだ。おめでとう」
いきなり、人事のようにそんなコトを言われ、一瞬、望美はきょとんとする。
でも、すぐに、はにかむように笑んだ。
「先生も、おめでとうございます。これで、先生もパパになるんですね」
『パパ』の意味が通じるかどうかは、微妙だったけど。
「………うむ」
間をおいて返された返事に、望美は優しく微笑み、道の先を見て、目を眇める。
その先では、追いかけっこをしている子供たちが、角を曲がり、視界から消えていった。
「ま。いきなり子供が出来たって言われても、私だって実感はないですけどね」
すべてがいきなりすぎるのだから、実感などあるわけがない。
腹も膨らんではいないし、動きもしない。
おまけに、散々弁慶に遊ばれた後となれば、感動する気力すら残ってはいない。
「気持ちの悪さも、本当に悪阻なのかどうかも、よくわからないし」
望美はようやく落ち着いてきた心のもと、楽しそうに笑いながら、気軽に言い放つ。
なのに、リズヴァーンは至って真面目な顔で、口を開いた。
「だが、弁慶が言い切るのだ。間違いはあるまい」
「そうですけど。先生だって、思ってもみなかったでしょう?」
クスクスと笑いながら言えば、ほんの少しの間、リズヴァーンが口を噤んだ。
――…図星だったらしい。
「……驚いたのは、確かだ」
視線をそらせつつ呟く愛しい人に、望美は何気ない顔をして、呟く。
「ですよねぇ。さすがの私も、びっくりです」
小さく笑いながら望美は、そっと、リズヴァーンと手を繋ぐ。
あまり、人前で必要以上に触れることのない望美だ。
否。
人前でなくとも、リズヴァーンに触れられることで、恥ずかしさを感じてしまうほどなのだけど。
それでも、今は、不思議と触れていたくなった。
心細いんじゃなくて。
なんとなく、今、この人と繋がっていたいと、思った。
(――…先生との、子供かぁ)
いつか、そんな日が来るとは思っていたけど。
まさか、それが今日だとは、さっきのさっきまで、考えてもいなかった。
うれしいかと言われれば、ものすごくうれしいケド。
どうしていいか、わからないって言うのも、本当の気持ち。
道の先から聞える子供の声も、微かに匂う人の家のおかずの香りも、鞍馬にいては感じることは出来ない。
それを寂しいとは、思わないけど。
(たまには、こういうのも、いいよね)
望美は暢気に、そんなコトを考えながら、歩いていた。
が、黙々と歩いていたリズヴァーンが、不意に、望美へと視線を向ける。
「――…とにかく、子を授かったのだ。おめでとう」
いきなり、人事のようにそんなコトを言われ、一瞬、望美はきょとんとする。
でも、すぐに、はにかむように笑んだ。
「先生も、おめでとうございます。これで、先生もパパになるんですね」
『パパ』の意味が通じるかどうかは、微妙だったけど。
「………うむ」
間をおいて返された返事に、望美は優しく微笑み、道の先を見て、目を眇める。
その先では、追いかけっこをしている子供たちが、角を曲がり、視界から消えていった。
「ま。いきなり子供が出来たって言われても、私だって実感はないですけどね」
すべてがいきなりすぎるのだから、実感などあるわけがない。
腹も膨らんではいないし、動きもしない。
おまけに、散々弁慶に遊ばれた後となれば、感動する気力すら残ってはいない。
「気持ちの悪さも、本当に悪阻なのかどうかも、よくわからないし」
望美はようやく落ち着いてきた心のもと、楽しそうに笑いながら、気軽に言い放つ。
なのに、リズヴァーンは至って真面目な顔で、口を開いた。
「だが、弁慶が言い切るのだ。間違いはあるまい」
「そうですけど。先生だって、思ってもみなかったでしょう?」
クスクスと笑いながら言えば、ほんの少しの間、リズヴァーンが口を噤んだ。
――…図星だったらしい。
「……驚いたのは、確かだ」
視線をそらせつつ呟く愛しい人に、望美は何気ない顔をして、呟く。
「ですよねぇ。さすがの私も、びっくりです」
小さく笑いながら望美は、そっと、リズヴァーンと手を繋ぐ。
あまり、人前で必要以上に触れることのない望美だ。
否。
人前でなくとも、リズヴァーンに触れられることで、恥ずかしさを感じてしまうほどなのだけど。
それでも、今は、不思議と触れていたくなった。
心細いんじゃなくて。
なんとなく、今、この人と繋がっていたいと、思った。
(――…先生との、子供かぁ)
いつか、そんな日が来るとは思っていたけど。
まさか、それが今日だとは、さっきのさっきまで、考えてもいなかった。
うれしいかと言われれば、ものすごくうれしいケド。
どうしていいか、わからないって言うのも、本当の気持ち。