リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
戸惑って固まる先生を見ちゃ、何を言っていいかもわからないし、なんて、声をかけていいかも、わからない。

でも、なんとなく、先生の考えていることがわかるから、余計に困る。

(……これから、どうなるのかなぁ……)

心配性のダンナサマを抱えて、妙に、心が揺らぐような気がした。

そんな望美の思いに気付くことなく、リズヴァーンは、ため息交じりに呟く。

「だが、これからは、体を労わることを、第一に考えねばなるまい」

「……それって、私の、ですよね?」

これ以上、過保護にされるのかと、そろ~っと、上目で見上げれば。

「無論。お前の体は、もう、望美一人のものではないのだ」

リズヴァーンが表情を変えることなく、きっぱりと言い切った。

本気の、真顔で。

冗談などと、微塵も見えないような、真剣な声で。

いまどき、テレビドラマや、漫画でも聞けないようなセリフを、望美に向かって言った。

確かに、今、真面目に言い切った。

さすがに、その言葉を聞いて、望美はびっくりしたように、目を丸くする。

だが、すぐに、道端なのも気にすることなく、大きく笑い出した。

「あ、あははっ!すっご~い!!!本当に、そういうことって、言われるんですねっ!」

突然、楽しそうな声をあげる望美に、驚きつつも、リズヴァーンが訝しげにその顔を窺う。

「……何がそれほど、可笑しい?」

「だって、先生、真面目顔して言うんですもん」

「当然だ。戯言ではない」

「それを言うなら、先生だって一人の体じゃないんですからね」

笑いを収めることなく、笑ったまま、望美はクイッとリズヴァーンを見上げる。

「私もみんなも先生のことを必要としているんですよ?だから、先生も一人じゃない。でしょう?」

大口を開けて笑う望美に、リズヴァーンが虚を突かれたように、目を見開く。

その姿に、望美は余計に笑い声をたてた。

「先生はこれでもう、一人になれないんですよ。ってか、逃がしませんけど」

笑いながら、からかうように言えば、リズヴァーンがふっと、苦笑を零す。

「望美を一人にしては、何をしでかすか。安心して、逃げるコトも叶わぬ」

「――…それって、聞きようによっては、私が危険人物のように聞えますよ?」

「耳は確かなようで、何よりだ」

その失礼極まりない言葉に、望美は笑いを収めて、ムッと口を尖らせた。

「……その危険人物を、愛しちゃって止まない人は誰ですか?」

一矢報いてやろうと、恥ずかしいながらも、望美は悔しそうに呟く。

だが、リズヴァーンはふっと、楽しそうな笑みを浮かべた。



< 52 / 99 >

この作品をシェア

pagetop