リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「うん。……妊婦抱えて、隠行で跳んでいいか、どうか……」

と、そこまで望美が言うと、朔がいきなり目を丸くした。

「ちっ、ちょっと待って、望美。妊婦って……。まさか――…」

「ん~、私。……って、さっき知ったんだけどね」

仄かな気恥ずかしさで、頬を染めながらも、望美は楽しそうに笑った。

が。

「望美!あなたに「やや」が出来たの!?」

これまた、珍しく朔が目を瞠りながら、大きな声をだして、盛大に驚く。

その、あまりの驚きように、望美もびっくりしながらも、小さく肯き、戸惑いながら返事をする。

「え~、あ~、うん。……そう、みたい。今朝、弁慶さんトコ行ったら、そう言われて……」

恥ずかしそうに視線を泳がす望美をよそに、朔はうれしそうに、満面の笑みを浮かべた。

そして、パッと望美の手を取る。

「おめでとう、望美!」

「あ、ありがとう……」

まるで自分のことのように、嬉々として声をあげる朔に、望美はほんのりと頬を染めた。

「まあ!何てことなの!あなたにややが出来たなんて……っ!」

「そうだよね~。私もびっくりしちゃって……」

テンションの上がる朔に、望美も今まで起こったことを話そうと、口を開いた。

の、だが……。

「でも、どうしましょう!産婆さんはどなたに頼もうかしら?」

望美が言葉を言い切る前に、いきなり、思ってもいない言葉を投げかけられて、咄嗟に面食らう。

「え?さ、産婆さん……って?」

「安心して、望美。必ず、よい方を探し出して見せるわ!ああ、それより、ここで産むのよね?」

突然のことで、いろんな想いが錯綜しているのか。

完全に、パニックを起こしているのか。

朔が、望美でも考え付かないことを、夢中になって話しだした。

「それなら、ココに望美の部屋を用意しなければいけないわね。

当然、日当たりのいいお部屋よね。そうね、お花の見える部屋がいいわ。そうしましょう。

それと新しい調度品も用意するわ。細工のいいものはヒノエ殿に言えばきっと、見つかるはずよ。

模様替えは、敦盛殿に手伝っていただこうかしら?」

望美を見ることなく、うっとりと悦に入りながら、ノンブレスで。

言葉を言いよどむことなく、すらすらと。

思ってもいなかったことを並べられれば、親友の望美ですら、少し引く。

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