リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
ってか、その勢いに負けそうになった。

そして、朔の話を聞きながらも、頭の片隅で思う。

その気持ちは、十分に分かるのだけど。

とってもありがたいのだけど……。

……これは、声をかけてもいいものなのだろうか、と。

それでも、放っておけるはずもない。

望美は勇気を持って、妄想に突っ走る朔に声をかける。

「あ、あの~~~、朔?」

「産着も用意して……。でも、その前に、安産祈願に行かなくてはいけないわ。

よい日を兄上に占っていただいて。ああ、その時は、九郎殿に牛車を用意していただきましょう」

と、そこまで聞いて、話がだんだんと、大きくなっていることに望美は、ようやく気付いて。

「譲殿にも、特に栄養のあるものを作っていただいて。将臣殿には望美の世界のしきたりを窺わなければならないわね……」

「だ、だから、朔さん。私の話も少しだけ聞いて――…」

「それより、応龍を呼び出して、望美を守ってもらった方が安心かしら?」

朔が小さなため息と共に、とんでもないコトを呟き始めたから、望美はマジで焦り始めた。

「っちょ、ちょっと待って、朔っ!それはヤバイから!まずは落ち着こう!」

何処まで本気なのかわからない朔の話を止めようと、望美は少し大きめな声でその名を呼ぶ。

の、だけど。

ようやく、その漆黒の瞳に望美を映したかと思うと、朔はニッコリと笑った。

「あら、安心して。私がきっちりと用意してみせるわ」

自身満々に言い切られて、望美は困ったように笑む。

「その~、気持ちはうれしいんだけど。でも、……まだまだ、ずっと先だよ?」

「え?」

「あ~、だから、……今すぐは、産まれないよ?」

はにかみながら言えば、朔が、自分の暴走妄想に気付いたのか。

ポッと、恥ずかしそうに頬を染めて、両手で、恥ずかしそうに、その頬を包み込んだ。

それは、それで、ものすごく、可愛くて。

白龍並みに可愛いから、つい、望美も、抱きしめそうになるのだけど。

(ってか、応龍呼んだら、また、この世界がえらいことになっちゃうじゃない……)

その前に、妄想から朔が戻ってきてくれて、心からホッとした。

「そ、そうよね。イヤだわ、私ったら」

恥ずかしそうに、はにかむ朔を見て、望美はうれしそうに微笑む。

「ううん。ものすごく、うれしいよ。私も、どうしていいか、まったくわからないし」

……いや、わかるはずがない。

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