リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
『もしかして、先生は子供が欲しくなかったのかな?』

『赤ちゃんが出来て迷惑に思った、なんてコトは、ないよ、ねぇ?』

『それとも、鬼の子なんて、産んでほしくないの、かな……?』

って、川原を歩きながら、リズヴァーンの冷静な顔を見ていて、望美の頭にそんなコトが浮かんだ。

(私はすっごく、うれしいのになぁ……)

でも、戸惑うリズヴァーンを見てしまうと、望美も素直に喜ぶに、喜べなくなる。

その過去を、知っているから、余計に。

鬼だからって人から忌避されて、人里離れて、ひっそりと暮らしていた事実を知っているだけに。

困惑するリズヴァーンの気持ちは、望美もわからないでも、ないのだから。

「今頃、黒龍相手に、人生相談でも、しているかもよ?」

自分で言っておいてなんだけど、その姿を思い浮かべれば、妙におかしくて。

(でっかい体躯をした先生が真面目な顔をして、小さな子供姿の黒龍に、お庭で人生相談?)

そう思ったら、つい、クスクスと笑ってしまった。

でも、そんな望美を、朔が不思議そうな顔で見つめる。

「あら、リズ先生が何を相談するの?」

「生まれてくるのは鬼だから~とか。私をどうやったら、元の世界に帰せるか~とか、かな?」

想像される話に、笑いながら言うけど、望美は少しだけ目を伏せた。

「まぁ!何故、そんなコトを?」

意表を突かれた朔が、驚いたように声をあげる。

「ほら、だって、……先生だし」




あの戦いが終わったあと、一緒にいることは出来ないと、消えた瞬間を、望美は今でもはっきりと覚えている。

自分は鬼だから、と。

そんな理由で、人から――望美の前から姿を隠そうとする人だ。

多分、今も、そんなコトを考えているような気がする。

お腹に赤ちゃんがいるなら、望美を元の世界に帰したほうが安全なのではないか、とか。

(でも、あの百花繚乱の日に、逆鱗は消えたから、元の世界には帰れないんだけど)

それでも、何か道がないか、黒龍に聞いているんだろう。

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