リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「腹の子も同じ。お前が無用の心配をする必要はない」

口調をきつくすることもなく、淡々と静かに。

でも、力のある声で諭されて。

望美の心が、不意に、グラリと揺れた。
その言葉は、うれしい。

とりあえずは、自分もお腹にいるはずの赤ちゃんも、見放されたわけじゃないと、思えば。

先生が、私たちを手放そうとはしないと、言ってくれるなら。

ものすごく、うれしいし、安堵もする。

でも。

やっぱり、先生は――…。

(赤ちゃんを宿したことは、喜んではくれないですね……)

それが、あまりに悲しくて。

望美はその想いに耐えながら、リズヴァーンを安心させるように小さく微笑んで。

そして、静かに、顔を伏せた。




喜んで欲しいって言うのは、きっと、私のわがままなんだろう。

こんなこと、先生に強制するようなことじゃない。

それは、十分にわかっている。

鬼としての、先生の気持ちに気付いていているし。

いきなりのことで、先生が困惑するのも、わかっている。

それでも。

(やっぱり、先生にだけは、喜んで、欲しかったなぁ……)

小さな命が宿ったことに。

二人の愛し合った証を、このお腹に授かったことに。

そのコトだけは、一緒に、喜んで、欲しかった。

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