リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
うれしいね、って。

産まれてくるの、楽しみだね、って。

朔よりも、弁慶さんよりも、仲間達の誰よりも、先生に一番、喜んで欲しかった。

ううん。

何も言わなくていいから――…。

せめて一瞬でもいいから――…。

先生に赤ちゃんのコトを祝福して欲しかったのだ。

なのに、先生は、いつでも私を諭すだけ。

ヒトゴトみたいに「体を大事に」と。

「赤ちゃんの心配はするな」と。

真面目な顔でそう言って、優しく笑ってもくれない。

先生の今までの過去を考えれば、それは仕方のないことなのかもしれないけど。

それでも、先生なりに、赤ちゃんと私を大切にしようとは、思ってくれるんだから。

一緒に喜んで欲しいって想うのは。

(――…私の、わがまま、なんだよね、きっと……)

それでも、一度浮かんだ悲しみは消えることがないから。

わがままなのは、十分にわかっていても。

望美は、泣きたくなるのをぐっと堪えて、ぎゅっと拳を握った。




そんな望美の姿に、リズヴァーンが微かにその顔を窺う。

「望美?具合が悪いのか?」

心配そうなその声に、望美は小さく首を振る。

本当ならちゃんと返事をしたほうがいいんだろうケド、さすがに今、声を出せば、涙が零れそうだ。

そう思っているのに。

「ならば、顔をあげなさい。お前が顔を伏せることはない」

諭されてしょげているとでも思ったのか。
< 62 / 99 >

この作品をシェア

pagetop