リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
揺れ動く乙女心とか、妊婦心とかを、まったく推し量れないリズヴァーンが、容赦なく、言葉をかけてくる。

どうしようかと、一瞬迷ったケド。

(このまま、下を向いていたても、また、ややこしいことになるんだろうなぁ)

それがわかるから、望美はしかたななく、小さく息を吐いて、顔に笑みを貼り付ける。

そして、ゆっくりと、リズヴァーンを振り仰いだ。

でも、やっぱり、上手く笑えてはいなかったのだろう。

望美の顔を見て、リズヴァーンが僅かに驚いたような表情を浮かべた。

「………どうしたというのだ?」

どこか戸惑うようなその声に、望美はリズヴァーンを見つめたまま、軽く首を振る。

「さっそくの、マタニティブルーだともで、思ってください」

小さな声で言えば、言葉が理解できないのだろう、余計に訝しげな目で見つめられた。

「意味がわからぬ。何があったのか、きちんと説明しなさい」

「だ~か~らっ!ただ、ちょっと無性に、悲しくなっちゃっただけです」

悲しみを振り払うように、怒ったように言えば、リズヴァーンが僅かに眉を寄せる。

「何故、お前が悲しむ必要があるのだ?」

「妊婦にはそういうことが、たまにあるんです」

でも、そんなコトで、リズヴァーンが納得するわけもなく。

「お前が私にわからぬ言葉を使うときは、何かをごまかしたいときだ。お前は何を考えている?」

と、本当に容赦を知らない言葉が返ってきた。

「もう!今だけでいいですから、ごまかされてくださいよ~~~」

そう頼んでは見るものの、これで本当にごまかされてくれるとは、望美自身も思っていない。

だから、泣き言のようにいいながらも、他のいいわけを考えようとした。

が。

(って、無理だよっ!相手は先生だもん!)

自分で、自分に突っ込みを入れながら、そっと、上目遣いでリズヴァーンを見つめる。

真っ直ぐに注がれる眼差しは、心配そうでもあり。
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