リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
頼りなげに聞かれて、望美は目を剥きながらも、慌ててリズヴァーンの胸倉を掴んだ。

「も、もちろんですよ!だって、先生との赤ちゃんですよ!?」

「だが、途方に暮れていただろう?」

「そ、そりゃあ。いきなり、仲間に妊娠してますって言われて。宿った日までばれてたら、誰だって、途方に暮れます!」

噛み付くように言い放つ望美に、リズヴァーンが訝しげな目をして、小さく首を傾げた。

「そうだろうか?」

「それに、あの弁慶さんが、面白おかしくみんなに言いふらすかと思ったら――…ッ!」

そこまで言えば、リズヴァーンが、ようやく納得したとばかりに「ああ」と、小さな声をあげる。

「ならば、お前は私の子を、自ら望んで産みたいと、思うのか?」

「当、然、ですっ!」

きっぱり、はっきり、その目を見ながら、望美は言い切った。

「――…そうか」

すると、リズヴァーンが、ホッと安堵したように、優しく微笑んで。

本当に、うれしそうに、その瞳を柔らかくほころばせて。

ふわりと、逞しい腕が、望美の体を大事そうに優しく包み込んだ。

そして。

「そうか。お前も喜んでいたのか」

望美を抱きしめながら、その頭の上で、リズヴァーンがうれしそうに小さな声で呟いた。

その姿に。

安堵の、その声に。

そっと、優しく包む、その腕に。

泣きたいほどの、うれしさがこみ上げる。

普段から、うれしい気持ちを、たくさんの言葉で顕にする人ではないけれど。

抱きしめられれば、すぐに、その気持ちが伝わってくる。

目は口ほどにものを言うとは、云うけれど。
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