リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
その瞳を見ることがなくても、包まれる暖かさは、いつでも愛おしさと共に思いを伝えてくれる。

そして、今。

その大きな体は、ただ、うれしいと、物語っていた。

「腹の子はお前にも望まれて、生まれてくるのだな」

「先生と私の赤ちゃんなんですよ?望まないわけがないでしょう?」

説得するように、でも、優しく望美が諭すように呟くと。

リズヴァーンが、少しだけ包む腕の力を込めて、望美の耳元で囁いた。

「私たちに子が授かったこと、神に感謝をする」

それから、心から、うれしそうに。

「……私とお前の子、なのだな」

小さな声で、リズヴァーンが呟いた。




――…ああ。先生も赤ちゃんを祝福してくれてる……

それがうれしくて。

たまらなくうれしくて。

望美も満面の笑みを浮かべながら、その大きな胸に頬を寄せた。




うれしいねって。

ものすごく、うれしいねって。

パパも言ってくれてるよ?

暖かな腕に包まれながら、実感のない赤ちゃんに向かって、望美は心の中で、うれしそうに呟いた。

が。

望美は、その喜びに浸る間もなく、ハッとする。

「って!もしかして、先生。私が嫌がっているとでも思ったんですか!?」

心外だとばかりに、少しだけ身を捩りながら言えば、頭の上から小さな吐息が聞えた。

「腹の子は、鬼だ。お前が厭うのも理解できる」

「先生だって、鬼じゃないですか!赤ちゃんだって、私が嫌がるはずがないでしょう!?」

「だが、白龍を呼び出だそうとするぐらいだ。腹の子を還したがっているのではないかとは、思った」

「なっ!」

「だが、私と望美の子だ。還されては困る」

抱きしめられながらも、白龍代わりにその胸倉を絞めて、望美はいきり立った。
「あったり前です!!!」

容赦ない望美の絞めに、リズヴァーンが僅かに眉を寄せる。

「――…だから、黒龍に相談していたのだ。どうすれば、子が還されずにすむか」

「え?黒龍に、ですか?何で?」

リズヴァーンの一言に、望美は胸倉を掴んでいた手を緩ませた。

「黒龍の力は、留める力。黒龍ならば、子を望美の腹に留めておくことが出来るやも知れぬ」

「………だから、ココに来て、すぐに黒龍に会いに行ったんですか?」

「お前が決断を下す前に、動かねばならぬだろう?」

「……って、弁慶さんちから、ずっと、そんなコトを考えていたんですか?」

呆れたように聞けば、リズヴァーンが小さく肯いた。
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