リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「そうだ」

返事をされた拍子に、望美の手がずるりと、リズヴァーンの胸倉から離れる。

そして、「はぁ~~~」と、思いっきり大きく息を吐いた。
(ホント、マジで、この先生を、どうしてくれよう――…)

そう思いつつ、一気に、体中の力が抜けた。

今まで、妙な心配やら、不安やら、グルグルと考えていただけに、この、不器用さに、脱力する。

そして、うなだれるように、コツンと、望美は額をその胸に押し当てた。

「――…ど~~して、私に直接、聞いてくれないんですか……」

それなら、馬鹿みたいなことを考えなくても済んだのに。

不安に思うコトも、悲しく思うコトもなかったのに。

それより、嬉々として、一緒に素直に喜べたハズなのに。

(ってか、もう、一緒に喜ぶ時節は逃しちゃったよ――…)

そう思うと、望美は、もう一度、これ以上ないってぐらい、大きくため息をついた。

「ちゃんと言ってくれれば、こんなことにはならないのに……」

ほとほと、呆れ果てながら言えば、リズヴァーンが小さく呟く。

「お前が一度、決めてしまったのならば、私はそれに従ってしまうだろう」

あの、楽園での出来事のように。

と、暗に含ませたような言葉に、もう、望美の口からは、ため息さえ零れない。

「……そうしたくないから、聞けなかったんですか?」

「子が出来ること。それが、お前にとって良いことか悪いことなのかは、誰にもわからぬ」

「良いことに、決まってるじゃないですか……」

そんなコトもわからないのか、この人は。

大好きな人との間に、願ってもない、神様からの贈り物だ。

ドコの誰が聞いたって、喜ばしいことじゃないか。

なのに。

(ど~~~っして、この人は、いろんなことを考えすぎるんだろう?)

ってか、いつも、いつも。

毎回、肝心なトコで、私たちの考え方は、こうも見事にすれ違ってしまう。

想っていることは一緒なのに。

うれしくてたまらないって気持ちは、一緒なハズなのに。
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