リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
でも――…。

愛しい人が、赤ちゃんを授かったことを、何よりも心から、喜んでくれていて。

そのために、誰よりも早く、いろんなコトを考えてくれて。

必死に、赤ちゃんのことを守ろうとしてくれていたんだって知っちゃったら。

私たちの赤ちゃんを、先生なりに一生懸命、愛してくれていたと知ったら。

(も~~、ホント、先生ってば、私のいいポイント、突いてくれるよなぁ)

うれしくなって、真剣に怒るコトも、出来ないじゃないか。
惚れた弱みと言われようが。

師匠に頭が上がらないと、言われようが。

誰に、何を言われようが。

怒りがうれしさを上回ることなど、絶対にあるはずがない。

――…心底、呆れることは、あったとしても。

愛おしさ以上の感情を、望美が抱くことは、ない。

「……とにかく。お互い、うれしいときは飛び跳ねてでも喜ぶ努力でも、しましょうか?」

そうすれば、とりあえずの意思疎通も出来るだろう。

その聡すぎる賢い頭は、私の考えなんて、簡単に凌駕してしまうのだから。

先生が何を考えているのかなんて、到底、私に悟ることなんて出来ないのだから。

何はともあれ、態度で示してみれば、どうにかなるかもしれない。

もちろん、うれしい気持ちで、二人で喜び合うコトも、出来るだろう。

そう思って、苦笑いを浮かべながら、望美がリズヴァーンを振り仰ぎ、ポツリと呟けば。

うれしそうな顔をしていたリズヴァーンが、苦笑を零す。

「お前はやめなさい。子に響く」

「あ」

――…確かに。

まだ、安定期にも入らない妊婦は、飛び跳ねない方がいいかもしれない。

それに気付いて、望美も苦笑を零した。

(先生のほうが、よく知ってらっしゃるらしい)
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