リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
それは、望美を、なのか。

それとも、赤ちゃんを、なのか。

どちらにしても、望美にとって、うれしいことに変わりはない。

「お前はただ、子を守るように、努力しなさい」

優しく目元を綻ばせ、諭すように言うリズヴァーンに、望美はうれしそうに笑った。

「大丈夫です。ちゃんと、守って見せます。私たちの大事な赤ちゃんですから」

「――…ただし。おとなしく、だ」

念を押すように言われて、望美は一瞬、ムッとするものの。

目の前にいる愛しい人が、あまりに、うれしそうだから、怒るのも、はばかられて。

と言うより、うれしそうな笑みに、棘が抜けてしまって。

「出来る限り、は、頑張ってみます」

と、言って、望美はニコッと笑った。




――…二人で、大喜びは出来なかったけど。

昔、テレビで見たように、喜んではしゃぐお父さんの図を、先生では見れなかったけど。

(それは、それで、ちょっと残念だけど……)

それでも、赤ちゃんを大切に思っている気持ちだけは、ものすごく、伝わった。

先生も、赤ちゃんを喜んで迎えてくれることが、うれしくて。

二人にとって、大切なものが増えていくことが、うれしくて。

それが、ものすごくうれしくて。

暫く、リズヴァーンの胸に抱かれながら望美は、まだ見えない愛しい赤ちゃんを、二人で包んでいた。




何を考えているのか、私にだって、未だに、さっぱりわからないパパだけど。

ついでに、ちょっと、うかつすぎるママだけど。

それでも。

私たちの赤ちゃんでよかったって、思ってもらえるように頑張るから。

だから。

「無事に、生まれてきて。早くお顔を見せてね」

望美はリズヴァーンに抱きしめられながら、お腹に手を当てて、小さく呟く。

その声に、リズヴァーンが優しく笑みを深めた。




その日。

梶原邸の庭中の花が、開花したことは、今でも、語り草になっている。




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