リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
おまけ→




「男の子ですかね?女の子ですかね?」

暖かな腕に包まれながら、望美が顔をあげれば。

蕩けそうなほど、うれしそうに笑みを浮かべるリズヴァーンと、目が合う。

「お前の子だ。どちらでも愛らしいだろう」

「先生の子供だもん。きっと、ものすごく、可愛いですよ」

ニコニコと微笑みながら二人は、朔と黒龍に見つめられつつも、しあわせのど真ん中にいた。

――…私の求めたしあわせって、こういうことなんだなぁ……

リズヴァーンに抱きしめられながら。

望美はしみじみと、「あの時、この世界を選んでよかった」と、心から思った。



ただし――…。

そんなものは、一時の喜びで。

その後すぐに、梶原邸に乗り込んできた八葉に、望美は散々な目に、合わされるはめになる。

「って、弁慶さんがぺろっと、しゃべりやがったんですか!?」

ドタドタと、容赦なく御簾を潜る八葉に。

敬語なんだが、罵倒なんだか、わからないようなことを叫び、望美はぱっと、リズヴァーンから離れた。

「ええ、もちろんです。こんな慶事を隠すほうがおかしいでしょう?」

心底うれしそうに、弁慶が穏やかに笑う。

「神子。リズ先生。ご懐妊の旨、お喜び申し上げます」

と、何故か、敦盛さんがかしこまって、正座までして、頭を下げるから。

つい、つられて、望美とリズヴァーンも「ありがとう」と頭を下げた。

(って、喜んでくれるのは、本当にうれしいんだけど)

仲間達に、赤ちゃんを迎えてもらえるのは、本当に、うれしいんだけど。

あの日以上に、喜んでくれるのは、ものすごくうれしいってのは、間違いなのだけど。

それでも。

人には、堪忍袋と、忍耐の限界と言うものがある。

――…ヒノエくんが、それはもう、軽々とするから、朔に大目玉を食らってたケド。

めでたさに、感極まって泣き始めたり。

――…そっと、黒龍に手ぬぐいを渡されて、景時さんは余計に泣いていたケド。

いきなり、盛大な宴をしようと、言い始めたり。

――…材料片手に……って、譲くん、相変わらず手際がいいね……。

よりにもよって、頼朝や上皇にも、嬉々として手紙を送ろうとしたり。

――…そんなコトしたら、マジで一生恨むよ、九郎さん!

しまいには、人のお腹を触らせろと、言い出しやがったりする八葉を見て。

――…後で締め上げるから、覚悟しておけ、将臣くんっ!

 
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