リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
好き勝手に振舞う、仲間たちを見て。

もう、いい加減にしてくれと、さじを叩きつけて、お家に帰ろうかと思ったけど。

「身重の体を、なんだと思っているんだ!」と。

コンコンと先生並の説教をしてやろうかとも、思ったけど。

それより何より。

浮かれて、大騒ぎしている仲間たちに、真顔で尋ねたくなる。

(――…それってさぁ、全部……)

『普通、パパになる人がやるもんじゃないの!?』

リズヴァーンの手前。

望美は必死に、その言葉を飲み込んだ。

ええ。飲み込みましたよ。

弁慶さんの薬湯並みに、苦々しい顔をしながら。




――…もう、今度はこの「元」八葉たちを、どうしてくれよう。

そう思うものの。

ちらりと、隣を見てみれば。

よろこびに湧く八葉を、リズヴァーンが優しく目元を緩ませながら、見つめている。

身重の自分の妻が、飲めや歌えの、宴会のダシのように扱われたとしても。

「私はみんなの、嫁じゃな~~~いっ!」と、叫びたくなっているとしても。

たぶん、本気で、うれしいんだろう。

仲間をとても大切にしている人だから。

そんな、かけがえのない仲間に喜んでもらえて、先生も、うれしいんだと、思う。

ものすごく、わかりづらいけど、そういう人だから。

とても、仲間を愛おしむような人だから。

その姿を、目の端に捉え、望美はため息交じりに苦笑を零した。

「先生も、みんなを止めてくださいよ~~~」

泣き言をいいながら、望美は壁を背に座るリズヴァーンの元へと、パタパタと、近寄る。

そして、大騒ぎする仲間たちを見ながら、その隣に腰を下ろした。

「子が生まれれば、喜びはこれ以上だろう。覚悟を決めなさい」

うれしそうに笑う愛しい人に、望美はつい、ぐったりとその肩にしだれかかる。

「――…私、みんなのおもちゃにされてるんですけど?」
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