リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
子供のようなその仕草に、リズヴァーンが優しく笑った。

「そうだ。皆が心待ちにしている。そのことに順位は関係あるまい?」

諭すような物言いではあるけれど、その想いに、望美はうれしさを感じる。

だが、それでも、ほんの少しだけ残る不満を口にした。

「でも、もう少し、お母さんのこと、信じてくれてもいいと思いませんか?」

望美がリズヴァーンに向かい、愚痴のような言葉を漏らせば、傍で聞いていた朔が『あらあら』と、どこか呆れたような笑みを浮かべた。

「望美。彼もあなたを信じていないわけではないと思うわよ?」

「なら、どうして『大丈夫だよ』って言ってるのに、あんなに怒るんだと思う?」

不思議そうに呟く望美に、リズヴァーンが穏やかに口を開く。

「男にはわからぬこと故、信じていても、心配なのだろう。」

そう言われ、望美は「ふ~ん。」と納得しながらも、ちらりとリズヴァーンを窺った。

「…先生も?」

どこかからかうような調子で言う望美に、リズヴァーンが小さく笑う。

「身重の心配は、セヴィロスのときに使い果たした。」

苦笑と共に話される言葉に、望美はむっとした顔をし、朔は楽しそうに笑い声を上げる。

「先生の仰るとおりよ、望美。あの時は周りの全員が、望美を心配していたもの。」

「でも、ちゃんと私の言った通り、無事にセヴィを産んだでしょ?」

「ええ。おかげで今回はうちの武士団を出さなくて済みそうよ。」

楽しそうに、もう、10年も前の話を持ち出してきた朔に、望美は慌てて、言い繕うとする。

「あっ、あれは、九郎さんとか景時さんが勝手に…。」

「だが、誰にも言付けをせずに、出かけたのは誰だ?」

「しかも、一人で出かけてしまったのよね?」

二人に責め立てられるように言われ、望美はバツの悪そうな顔をする。

「だって、あの時は一人になりたかったんだもん。」

言い訳のように呟けば、リズヴァーンと朔が目を合わせ、苦笑した。
 
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