リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-
「そうなの?じゃあ、九郎さんは、何か言っていなかった?」

どこか期待を込められた目で望美に見られ、戸惑うも、セヴィロスは素直に首を横に振る。

「いいえ、特にはありません。」

セヴィロスのはっきりとした返事に、望美はしゅんと肩を落とす。

「え…っと。僕、何か悪いことでもいいましたか?」

それを見て、セヴィロスが心配そうに望美の顔を窺った。

セヴィロスは、その望美の様子に困惑し、視線をリズヴァーンに向ける。

助けを求めるような息子の視線に、リズヴァーンは苦笑を浮かべ、望美に一言、声をかけた。

「九郎が来ても、手合わせは出来ぬ。諦めなさい。」

諭すようなその一言に、望美が口を開く前に、セヴィロスがいきなり大きな声を出す。

「母上!九郎殿と手合わせする気だったんですか!?」

驚きで目を丸くするセヴィロスに、望美はバツが悪いのか、ふらりと視線を泳がせる。

「…だって、この前まで悪阻で動けなかったし。もうそろそろ、いいかなぁ…って。」

言い訳のように呟かれる言葉に、セヴィロスの目の色が変わった。

「よくありません!何を考えているんですか!」

すごい剣幕で怒り出したセヴィロスを見ながら、望美は困ったように笑う。

「何…って…。剣の練習がしたいな…って。」

「そんな事、駄目に決まってるじゃないですか!母上のお腹には、僕の弟か妹が宿っているのですよ!?」

「うん。そうなんだけど。なんか剣を振らないと、なんとなく落ち着かないって言うか…。」

「そんな危ないことをするなら、落ち着かないでいいです!」

きっぱりと言い切られ、望美は不服そうな声を出す。

「え~。もう、10年以上、毎日やってきたことだよ?それをこの子が生まれるまで我慢しろって言うの?」

「そうです!我慢してください!」

そう自分で言った後、ふと、セヴィロスの表情が曇り、何かを考えるように目を伏せた。
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