推理はラテを飲みながら#00-全ケータイ小説読者への挑戦状-【完】
━━Ⅱ━━
ワインレッドの絨毯が敷かれた広々としたエントランスには、すでに2人の姿があった。
ひとりはパッと見、高校生くらいの若い女性。
ストレートの黒髪を指で忙しなく弄りながら、端っこの壁に寄りかかっている。
もうひとりは、正面の大階段の下から2段目に座っている、酷い寝癖なのかオシャレなのか判断がつきかねる「独創的な頭」をした中年男性だ。
よれた襟のシャツに、ダボッとした茶色のパンツ姿。
煙草の箱を開け、最後の一本を出しながらクシャッとつぶす彼のこともまた、匠は見たことがあった。
秋の大先輩にして、ミステリー界の重鎮、田中宗(たなかそう)だ。