ナツメくんの人気者理論【完】
『そ、そんなことないよ!同窓会すっごい楽しいし!』
それは、本当のコト。
だから、嘘、偽りもなくそう言える。
けど…彩香さんのことだけ…どうしても気になって仕方がなかっただけ…。
『…そっか?…もしオレに言えないなら、薫にでも聞いてもらえよ?』
『…っ!』
それだけ言い残すとナツメくんは、また男子たちの輪に戻っていく。
…もう…ナツメくんには、かなわないなぁ…
私は、軽くため息をついた。
その瞬間、
『里緒〜?どうかした?ナツメが、里緒が何か悩んでるみたいだから話聞いてやれって言われた…って!ちょっと!?』
薫ちゃんのその言葉を聞いた途端、私の頬を涙がつたった。
『…なんかあったんだね?話、聞くから…今日はもう帰ろうか?ナツメには、私が言うから』
そこまで言うと、薫ちゃんは、ポケットからスマホを取り出し、ナツメくんにメールをうち、周りの子たちには、
『里緒、具合悪いらしいから、一緒に抜けるわ!また集まろうね!』
それだけ言い残すと、私の肩を抱きながらすばやく店を後にした。
…薫ちゃん、ありがとう
私は、心の中でそう思いながら、流れる涙を拭っていた。