女王のココロを奪うkiss(休載)
「ここならだれもいないよね」
「たしかに、あんまり人は通らないかもしれないけど……」
そこは、今は使われていない空き教室だった。
元第三音楽室
今は倉庫に近い状態で、ホコリをかぶっているグランドピアノ
落書きされた壁
そこはかつての不良の溜まり場だったんだろう。
「ここは誰も近寄ろうとしない教室なんだ」
「なんでアンタがこんなところ知ってんの?」
「ちょっと噂を聞いたから」
一体誰からどんな噂を聞いてきたのか……まぁそんなことはいいか。
普段見慣れないピアノのところに行ってみると、思っていた以上にそれが大きかったんだなと思った。
ピアノなんて弾いたこともなくて、オタマジャクシとか記号とかもわけわかんなくて。
でも、弾ける人は当たり前のようにその世界に引きずり込んでいく。
そういえば、祐斗は弾けるんだったな、ピアノ。
「気になる?」
「……でかくて邪魔だなって思ってただけ」
「そう」
壁に背を向けて床に座った祐斗は、パンを取り出して食べ始める。
その口が、あたしの口を……と思ったところで思い出すのをやめた。