女王のココロを奪うkiss(休載)
唖然と、その食べる姿を見ることしかできない。
「このピザパン、俺も食いたかったから」
にこっと悪気のなさそうな笑顔を向ける。
ありえない、信じられない。
「……」
不意打ちだったからか、声が出なかった。
どう言ったらいいのかわからない。
いつものようにキモイと言えばいい、そんな簡単なこと。
でも今はそれどころじゃなくて。
「かれん、真っ赤になってる」
その笑みに、その流れるような動作に、間接キスという言葉に……心臓がドクンと大きく脈打ったのだ。
ヤバい、ダメ、このままじゃ、ダメになる、そんな気がした。
目の前のこの男に、自分が壊されていくような気持になった。
固まって動けなくなったあたしの後頭部に腕が回るのが視界の端に見えた。
逃げろと、頭の中で叫ぶけれど、体は緊張して動かない。
心の奥底で、期待が微かにこみ上げる。
例えば酒を飲んだ翌朝。
例えば知恵熱を出した保健室。
あの時の感触を、思い出してしまう。