女王のココロを奪うkiss(休載)


そして、あたしの方に歩みを進めてくる祐斗。



「……なに」

「ほんと、ムカつく」

「だから、帰ればいいじゃない」



ドアから1歩下がり、廊下への道をあけたけれど、祐斗はあたしの前でピタリと歩みを止めた。

そんなに嫌なら、帰ればいい。

なのに祐斗は動かない。

あたしは、なぜだろう……いつの間にか顔を下に向けていた。



「傷付いてる?俺の言葉に」

「別に」



いつもの言い合いだ、今更不満だと言われたくらいじゃ何とも思わない。

何とも思ってない。



「じゃあ」



祐斗の人差し指があたしの顎に当てられ、クイッと上に向けられる。

思わず目を見開いた先、祐斗の顔からは逃げられなくて。



「なんで下向く?」

「……見たくないからじゃない?」



視線を反らしてしまう。



「かれん」



呼ばれた名前にピクッと反応してしまう。

いつもよりも低い、その誘惑するような声に呼ばれる自分の名前に、頭がクラクラしそうになる。
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