女王のココロを奪うkiss(休載)


近付く顔に、あたしはもう抵抗しようとは思わなくなってきていた。



「逃げないの?」

「どうせ逃がす気なんてないんでしょ」



ピタリと止まったその顔に、少しだけ影が落ちる。



「あぁ、逃がさない」



短いキスを一度落とし、祐斗は離れる。

離れた祐斗の顔は、寂し気に笑っていた。

いつもの祐斗らしさを感じないその雰囲気に、チクリと胸が痛む。



「もう時間だから、教室に戻ろう」



立ち上がる祐斗に続き、あたしも立ち上がり、スカートのほこりを払う。

先に教室を出る祐斗の背中から、どことなく寂しさを感じた。
< 72 / 86 >

この作品をシェア

pagetop