女王のココロを奪うkiss(休載)
接触するな、なんてつい昨日言われたばっかりなんだけれども。
「ちょっといいかしら」
「……は?」
翌日昼休み、トイレの個室から出た直後を狙ったのかなんなのか、周りに人がいないスキに話しかけてきた、『有紗』。
祐斗に接触するなって言われたばっかりなのにもうコレだ。
こういう場合は無視して立ち去った方がいいんだろうか?
しかし入口に手を付いてこちらを見ている姿からして、きっとこれは逃さないという意思表示なのだろう。
無視したくても、無視できない状況が出来上がった。
なんとめんどくさいことか。
「あなたに聞きたいことがあるのよ」
こちらが試行錯誤して考えてるのも関係なしに、『有紗』は言葉を続ける。
あぁ、もう、めんどくさい。
ここで話したり殴り合いになんてなったら祐斗が絶対うるさい事言ってくるに決まってる。
(普通は殴り合いなんてしない)
としたら……。
あたしの頭の中には既に一つの答えが出ていた。
あたしは『有紗』がいる出口とは反対の方へと歩き出した。
「……ちょっと、どこ行くのよ」
「あーまぁ……」
そこにあるのは換気のために空いていた窓。
その窓枠に手をかける。
「捕まるわけにいかなくなったんで」
一瞬だけ彼女をみてひと言残して、その窓枠を、飛び越えた。