女王のココロを奪うkiss(休載)


風を切る感覚、後ろから聞こえる慌てる声。

あぁ、あの人でもさすがに取り乱すこともあるのか。

そんな呑気なことを考えながら、下の階の窓枠に足を付ける。



「あ、よかった、鍵開いてる」



その窓からスルリと体を入り込ませ、怪我もなく着地が完了した。



「さっさと祐斗のとこに戻らないとまた捕まるし、めんどくさい」



あたしはトイレから遠い方の階段を登って祐斗の教室まで走った。



「祐斗!」



正直、あたしから祐斗の教室に行ったことなんてなかったから少し気恥しさもあったけど、こればかりは仕方ない。

祐斗はあたしに気付くとすぐに表情が少し崩れた。

その一瞬の険悪した表情から、只事じゃないのは伝わっていたのだと知る。



「かれん、どうしたの?」



祐斗があたしのもとへ来てから周囲を見渡した。

祐斗も警戒していることがわかる。

あたしも周囲に注意を向けてから小声でさっきあった事の報告をした。



「あの有紗って奴、あたしがトイレから出るの待ち伏せてたんだけど」

「チッ……そうか」



大体の場所なら下の奴らをつかって接触しないようにすることも可能だろうけど、男しか使えない中じゃこういった隙も出来る。



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