君がいるだけで。




佐野くんと話していたことなんて忘れて、あたしはパアッと表情を変えた。



「さっちゃん!」



「“皐月”だろ」



あたしが笑顔で抱きつくと
あたしの頭を
くしゃくしゃと撫でた皐月。



皐月の大きな手に
いつも安心感を覚えてしまう。



「おっ!噂をすれば彼氏の登場、だな☆」



「うるせーよ、佐野。
千菜に手ぇ出すのやめろっての」



「いいじゃーん。
だって宮杉かわいいもん」



「……」





2人のやり取りを聞きながら
あたしは黙って
皐月に抱きついたままでいた。




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