君がいるだけで。
「違うよ~。
さっちゃんだけ特別ー」
「そっかそっかー。……て、
いつものように許すか、バカ」
そう言った皐月は
あたしの後ろから強く抱き締めた。
苦しいー、苦しいー、
くーーるーーしーーいーー!
「苦しいってばー!」
「ったく。ヒョイヒョイ違う男に着いて行きやがって」
「あたし警戒した!」
「嘘つけ!」
「本当だもーん!
でも佐野くん好きな人いるって言うから大丈夫かなって……」
「…それ聞いたら逆に警戒しないの、千菜?」
「ん?“好きなヤツいるから彼氏持ちには手ぇ出さない”らしいよ」
そう言って皐月を安心させようと笑うと、
なぜか、さらに皐月の表情は
険しいものに変わっていた。