君がいるだけで。
「千菜、その言葉が嘘だとか
考えないの?」
「ん?」
そう尋ねる皐月の顔は
後ろから抱きついてきているせいで、あたしからは見えなかった。
「どうして?
嘘をつく理由もないでしょ?」
「例えば、どこかのバカを騙すために使う、とか。あえて
“好きじゃない”って言っといてバカを安心させるため、とか」
「へえーなるほど!
さっちゃんは頭が良いね」
とゆうか、勘繰りすぎ?
そこまで裏をかいてたら
疲れないのかな?
「……千菜、俺をバカにしてんだろ」
「えっ!? ぜんっぜん!
滅相もないよ~」
あははと苦笑いを浮かべると
「嘘が下手くそだな」と笑いながら、あたしの頬にキスをした。
「……だから不安なんだよ」
「え? なんて言ったの?」
「…ん?なんでもないよ」
皐月の消え入りそうな声を
あたしは聞き逃して
もういっかい言って?と言ったが皐月は、くすっと軽く笑みを溢して話をはぐらかした。