君がいるだけで。




皐月の言いかけた言葉は
あたしの声で掻き消された。




「あのね、りっちゃんが……
さっちゃんのこと、好きなんだって」




「……は?」




突然また“りっちゃん”の名前を出したせいで
皐月の顔から笑みが消えた。



そして、
皐月はあたしに尋ねる。




「それが俺と
どういう関係があるの?」


「……ッ」



皐月、怒ってる。


そりゃそうだよね。



なんでもないって言っているのに、あたしが、しつこく“りっちゃん”のこと言うから……



しかも
莉奈に頼まれたことも実行できずにいた。



りっちゃんが皐月を好きだから



別れて、とも、りっちゃんと仲良くして、とも、何も言えなかった。



でも、なにかを察したのか
皐月が再び口を開いた。





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