君がいるだけで。




「……“また”頼まれたの?」




ビクッ。

“また”と言った皐月。
それを否定できないあたし。



あたし、
いつも断れないんだ……

相手に嫌われたくなくて……




またしても何も答えないあたしを見て皐月は今までにないくらい大きなため息を吐いた。



呆れてものも言えない、そう言った感じだった。




「千菜にとって、俺はなに?」



「え……」



急な皐月の質問に顔を上げると



皐月は
すごく切なそうな顔をしていた。




「千菜は頼まれたら……俺を友達に譲るのか?」



「……ッ!ち、ちがう!」




あたしは座っていたベンチから立ち上がって
皐月の裾を掴んだ。



しかし、
ゆっくりと皐月の手によって
それは外された。




「……いいよ。千菜が望むなら」



そう言って
あたしから離れて歩き出す皐月。



いや……いかないで……



「さっちゃん!」




振り絞った声で皐月を呼んだが皐月は

振り向くことはなかった。





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