君がいるだけで。
『皐月じゃなきゃダメ』
――――嫌われた。
明らかに
あたしが悪すぎる……
周りのざわめきが
やけに大きく感じて、
よけい、悲しくなった。
今頃、本当は……
『千菜』
皐月と一緒にいたはずなのに
とぼとぼと下を向いたまま
歩いていると
ドンッと誰かとぶつかってしまった。
「わあっ!ごめんなさい!
大丈夫です、か……って、宮杉じゃん」
「あ……佐野くん」
ぶつかったのが
お客さんじゃなくて、佐野くんであったことに一安心した。
「前向いて歩けよ?
人が多いんだから……なあ、
さっき泣いた?」
急に近づいてくる皐月以外の顔に体が強ばった。
そんなあたしに
佐野くんは優しく笑いかけて
「ごめん。ちょっと抜けるわ」
他の友達にそう告げて
あたしを誰もいないところへと連れていった。