君がいるだけで。
『離してやらない』
皐月……皐月……どこ?
あたしは
学校中を走り回っていた。
もう文化祭は
終わりを迎えようとしていて
きっと
もう皐月と回れない、けど……
仲直りがしたいの。
あたしの気持ち、聞いてほしいの……
外に出ると、少し向こうに
皐月らしき人が見えた。
しかし、その隣には……
「…りっちゃん?」
莉奈となにかを話しているらしいが、ここまで聞こえない。
不安が過る……
いやだ……いかないで……
「さっちゃん!!」
あたしは皐月のところまで
走りながら名前を呼んだ。
でも……聞こえていないのか
皐月は
あたしに気づかない。
聞こえない
まだ、届かない
おねがい……届いて……!
「――…皐月ッ!」
あたしが叫ぶと、
やっと皐月は、あたしの方を
振り向いた。
やっと……届いた。