君がいるだけで。
「……千菜?」
そうあたしの名前を呼ぶ皐月の声が久しぶりに聞こえた気がした。
――――ギュッ。
皐月のもとまで辿り着くと
あたしは何も言わずに
ただ抱きついた。
りっちゃんに……
ううん、誰にも……
譲りたくないし、譲れない
「千菜、離して。苦しいって」
「やだ……」
おねがい。
離れていかないで?
まだ皐月に抱きついていたかったけど、あたしには
“やるべきこと”があったから、ひとまず皐月から離れて莉奈を見た。
「…りっちゃん」
「千菜……」
お互い見つめ合ったあと
あたしは
思いっきり頭を下げた。
「ごめんなさい!
あたし、りっちゃんの頼み
聞けない!」
「え……」
驚いた顔の莉奈は、きっと
『なんで今さら…』って思ってるかもしれない。
それでも、
あたしの想いを知ってほしいから……
あたしは
また言葉を続けた。