朝子
「まったく、お姉さんの朝子ちゃんが大変だっていうのに、陽子ちゃんはどこほっつき歩いてるのかしらね」

 庭から聞こえて来る声に、私は手にしていたハンカチをきつく握り締めた。

 朝子の前では、いかにも痛ましげな顔をするくせに、本当のところは少しも悲しんでいない、無責任な親戚連中。

「陽子ちゃんって、妹さん?」

「そうよ、二つ下のね。朝子ちゃんによく似てたわ。中身は全然違ったけどねぇ」

「どちらにお住まいなの?ご結婚は?」

「それが、若い頃から外国をあっちこっち飛び回って……本人は旅するフリーライターなんて言ってたけど、ほとんど遊びほうけてただけなのよ」

「まぁ、活動的なお嬢さんなのねぇ」

「そう言えば聞こえは良いですけどね。ご両親が亡くなった時だって、海外にいたとかで後から来て……」
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