ピュアらぶストーリー。
ようやく実結も落ち着いてきて、とりあえず勉強するために近くの喫茶に入ることになった。
「何飲む?」
「うーん…あんまりこういう大人な雰囲気のお店に入ったことないから、何がいいかわかんないや」
確かに、それは俺も同じや。
コーヒー一杯650円てなに。しかも、ジュースが見当たらない。
「お決まりでしょうか?」
「うーん…じゃあ私、ミルクティーで」
「じゃあ俺は、このコーヒーで」
あかん、見栄はった。
コーヒーとか、あんま好きじゃない。
普段お茶以外に飲むとしたから果物系のジュースくらいや。
あっ炭酸は部活で禁止されてるから飲まへん。
コーヒーとか、大人だねっていう実結に、ひきつった笑みを返した。
「どうしてここ銅が析出するの?」
「これはイオン化傾向が……」
ばりばり理系の俺とまあまあなんでもこなす実結。
俺が文系科目が苦手ということで、理系科目を教えるかわりに文系科目を教えてもらうことになった。
果たして俺なんかが教えられるんやろか、って思ってたけど、実結の飲み込みの速さもあってなんとか役にたってるっぽい。
「翔太くんすごいね!!すごく分かりやすいよ」
「ほんまに?役にたてて嬉しいわ!」
「もう先生になったほうがいいよ!!」
ベタ褒めの実結。
ベタ惚れの俺。
うまくないとか言わんといて。
夕方まで勉強会は続き、時々雑談も交えて充実した時間を送った。
いよいよ明日がラストチャンス。
この一週間で俺には実結が必要なんやと、改めて思った。
日に日に好きが、強くなる。
実結を家まで送り届けて、別れ際にぎゅっと抱き締めた。
最後の、悪あがき。
離れたくない、離したくない。
そんな俺の意図が伝わったかのように、実結は呟いた。
「きっとこの先、私にはこの温もりが必要なんだよ。すごく、心地いい」
深い意味はわからなかったけど、その後フッと微笑んだ実結を見てひどく安心した。
また明日ね、と言って家に入っていった実結を見て、もう一度強く決心した。