愛の囁きを[短篇]
「お!隆志!…じゃ、穂波。後で。」
「ちょ、待ちなさいよ!」
前を歩く友達の姿を確認した奴は、私の言葉に耳を傾けることなく颯爽と走り去っていってしまった。
なんなんだー!?
はぁっと溜息をつき
前を歩く陽の背中を見つめた。
いつからだろう。
こんなにも胸が痛くなったのは。
心臓の速さが急に上がったのは。
陽の隣は居心地がいい。
でも、その反面、
何故か分からないモヤモヤした気持ちになる。
「穂波~!今日も仲良く登校?」
「…まぁね。」
こんな気持ち、18年間一回も経験したことがなくて、なんだか凄く嫌だった。
…だから毎日寝坊してるのに。
何で毎朝待ってるの?
何で毎朝一緒に登校してるの?
「…穂波、それってさ、」
「ん?」
お弁当の時間。
佐奈に今の心境を話した。
「壱君のことが好きなんじゃないの?」
「…はい?」