愛の囁きを[短篇]




視線を向けたその先で、絡まる2人の瞳。




手の中にあった携帯は、大きな音を立ててベッドの下へとスローモーションのように落ちていった。








「え?い、壱?」

「分かってやってんの?」






スローモーションに見えたのは携帯だけではなくて。腰だけベッドに座っていた壱の体が、全てベッドの上に上がりしかも私の真上に来ているのは何故でしょうか。





無防備に寝転がっていた私の動きを封じるように両手を押さえつけられる。







いつもと違う雰囲気に
いつもと違う壱に戸惑う。







「ど、退いてよ。」

「…無理。」






…怖い。




身動きがとれず
上から見下ろす壱を見て初めて思った。







…冗談、だよね?
またいつもの悪い冗談でしょ?







壱は昔からいつも私が困るようなことをしてきた。





幼稚園の頃は私の大事にしていたぬいぐるみを隠したっけ?


中学の時は私宛に書かれた男の子からの手紙を破って捨てたっけ?






私が怒るたびに壱は笑いながら[バーカ]と私を馬鹿にしていた。







今日も、今も
そうなんだよね?




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