甘い無口な彼氏



「夏と言ったら海でしょー」


そう言って綺麗な足を組み替える河南。そのしぐさだけでフェロモンたっぷり。


「透弥くんと行きたいなぁー…」

「行けば?」

「夏はどーせ部活でしょー」

「あぁ」


そっか、とどうでもよさげな声を漏らす。夏は大会があるから、運動部は忙しいに決まってる。
夏休みが来たら一日も会えなさそう…。


「今年もあたしと遊びまくるのね」

「うん!遊ぼ!今年の夏は河南と過ごす!」

「俺は」


おーっ!と片手を笑顔で上に突き上げると、上から不服そうな顔に覗かれる。一瞬思考が停止したけど、すぐに光の速さで離れた。


「透弥くん…!」

「だって部活あんでしょ」


珍しくまともなことを透弥くんに言った河南に、内心ホッとして、

「…部活ある」

その言葉に落胆したのも事実。
でも顔に出ないように必死に耐えた。無理矢理笑った。


「頑張ってね!大会!」

「うん」


じゃあね、と表情を一度も変えずに去って行く透弥くん。
それはつまり、私に会えないことを寂しがっている気持ちは一切ないということで。


「ううー…」

「はははっ、そういうの気にしなさそーだもんね」


なんて、何故か高笑いする河南。



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